というわけで、

こんな本が売れたという話を。

『哲学の教科書』中島義道著 講談社学術文庫 1100円 4061594818

 養老孟司の『バカの壁』は一冊しか売れてませんが(俺が一冊買ったんですが)、これはこの3ヶ月で20冊ぐらい売れました。まだまだ売れるでしょう。もはや定番。

 哲学者・中島義道の著書は多くて、文庫新書だけでも棚一列埋まるほどで、けっこう売れるんですが、やっぱこの『哲学の教科書』が最強ですね。
タイトル良し、ジャケ良し、値段良し、もちろん内容良し。
とくにジャケですね。青地に白抜きでドクロの横顔のイラスト。
教科書なのにドクロ。つい手にとってしまうんでしょうね。

 そして、さまざまな疑問にのたうちまわる哲学者たちの生き様がこれでもかというぐらいに紹介され、間に中島氏の哲学がちりばめられている。たとえば「哲学は何の役にもたたない」とかね。
 つまりそれは「無用の用」であって、「生きること」「死ぬこと」にこだわり続ける者の姿が哲学者ってことのようです。なぜこだわるのかというと、こだわり続けると、世界の見え方が少しずつ変わってくるから。

 たとえば、誰かを好きになれば、その人にこだわり続け、ささいなことでもよく見ようとするでしょう。そしたらよい面もいやな面も少しずつ見えてきますわな、その人の見方も変化するでしょう。
 それと同じなんじゃないですかね。人間も世界というものの一部ですし。
 この世界にもよい面もあればいやな面もあると。哲学者は、そのディテールをとことん見たがってる人って感じですかね。
 だから、哲学者と恋愛するのは、相当な覚悟がいると思いますね。

 うーん、例えば白石一文の『僕の中の壊れていない部分』(光文社)なんかそれに近いノリの恋愛小説かも。どんな恋愛をしたいか? ではなくて、そもそも恋愛とは何か? と問わずにいられない人は必読でしょう。
 同様に、いかに生きるか? いかに死ぬか? ではなく、生と死とは一体なんなのかと問わずにいられない人なら『哲学の教科書』は必読だと思います。

 メメント・モリ
 死を忘れるな!