ふみふみきゅっと

 よしながふみ『愛すべき娘たち』(白泉社JETS COMICS/ISBN:4592132955)を読む。
 これは21世紀のサザエさんになりうるべき傑作ではないか?
 20世紀高度成長期からみればもはや家族とは呼べないような関係性の上になりたっている家族の物語をつむぐ才能は、ポスト向田邦子と言っても過言ではないんじゃないのか、などと思いつつ読みふける。

 なんてうまいんだこの人は。

 『西洋骨董洋菓子店』(新書館)でも思ったけど、うまいなあ。
 微妙な人間関係のバランスとコンプレックスに揺れながらも確固たるポリシーを持った登場人物の魅力的なこと! 
 最小の描線によって描かれる感情豊かな表情の数々は、多田由美を髣髴とさせる。画風は違うけど。とくに哀しみを帯びたまなざしに愛おしさを感じる。まさに愛すべき娘たち。

 「分かってるのと 許せるのと 愛せるのとは みんな違うよ」

 最近(31にもなって)、恋と愛と恋愛はそれぞれ違うものなんだと気づいた俺にとっては、なかなか胸にしんとする良作でした。
 売るぞ。