そんかる

存在の耐えられない軽さ ミラン・クンデラ千野栄一訳 集英社文庫  819円 408760351

 というわけで、究極の哲学的恋愛小説『存在の耐えられない軽さ』が売れました。うーん、売れないって書いたら売れるんだから、これからどんどん売れてない本をあげていこうか。
 ま、なんにしろ嬉しかったね、売れて。しかし買っていったお客様は、20歳になるかならないかって感じの男の子で、この小説、楽しんでくれるかちょっと心配。
 ぼく自身は、1998年の初版を、ついこのあいだ読み終わったばかりで、つまりその間、2度ほど読み出しては挫折してたんですね。つまずきは最初の3ページで展開される、重さと軽さについての哲学的論考についていけなかったから。それから、主人公のトマーシュとテレザの関係や出会いのシチュエーションがいまいち把握できなかったから。
 ま、そこんとこを乗り越えたとして、最後まで読み終えたとしても、98年時点の自分では、いまの自分ほどこの小説を身につまされ楽しむことは、まずできなかっただろうなあと思います。
 かように、読書というのは個人的な体験によって、楽しみ方も理解の度合いも印象も変化するわけで、ま、それを考えれば、今日の彼には彼なりの体験があるのだから、彼なりの楽しみ方で、この小説を味わってもらえればよし。
 ま、この小説の醍醐味は、何も恋愛小説というだけではないので、例えばこの世界がいかにキッチュ=俗悪なもので取り囲まれているかということに思いをはせて、いやーなきもちになるもよし、どのような視線の下で生きたいと思っているかの4カテゴリーに自分をあてはめるもよし、プラハの春をめぐる歴史の断面を読み取るもよし、ほんと盛りだくさん。
 もちろん、エロさも抜群。これ、ポイント。加藤鷹の『秘技伝授』(ロングセラーズ)の後にでも読んでほしいなあ。いかにセックスするのかってこともそりゃ興味あるでしょうが、そのあとでなぜセックスするのか考えて、バランスをとっておきましょうよ。
 まあね、このバランスが難しいよね、なぜセックスするのか?と問いながら、セックスするのは難しいやね。
 あと、いま気づいたけど、セックスしながらの読書も難しいですよね。
 やったことないんで、一回試してみたいですね。
 いや、べつに、同意を求めてるわけじゃないから、安心して。